建築・アートの所感ノート

建築とアートの作品、展覧会、書籍などの感想を共有します。

読書感想:磯崎新『磯崎新建築論集 全8巻』「第3巻 手法論の射程――形式の自動生成」, 岩波書店

《 手法 》

 磯崎がマルセル・デュシャンを始め、ジャクソン・ポロック「ドリッピング」、ジョン・ケージチャンス・オペレーション」、アラン・カプロー「パフォーマンス」などが表現する方法を「手法」とよび、それを基に建築を構想すると述べられていた。現代アートのコンセプチュアルアートと同じ枠組みだ。
 なぜ「手法」を意識したかというと、磯崎は70年代始めに設計ができなくなったという。その行き詰まりから、最も基本となる正方形に着目し、立体化(キューブ)する。キューブの並べ方を考えて設計されたのが、群馬県立近代美術館だ。わたし自身、何回か行ったことがあるが、ようやく意図がわかった。22.5度振っている翼棟は、キューブを意識させるためだそうだ。
 わたしは現代アートも建築も両方好きなので、磯崎の考え方に非常に共感できる。

 

《 美術館 》

 美術館の説明にすごく納得した。芸術品は貴族のためのもので、自らの邸宅に展示していた。それらを「市民に見せてあげよう」ということで、公開を始めるのが美術館の始まりとなる。だから、ルーブル美術館など貴族の邸宅が美術館になった。展示方法も貴族がやっていた方法を踏襲している。
 近代になり美術は、貴族や教会がつくらせたものから、芸術家が自ら作品をつくり、売買される対象となる。そのような近代の芸術品は持ち運びが自由で場所を問わない。先行する美術に建築は遅れながら、建築空間も場所を問わない white cube が標準となる。世界中、どこでも芸術品を展示する空間は同質である。

 今、この同質性の限界が見えてきたため、これからはサイトスペシフィック性が重要度を増す。例えばベネッセアートサイト直島などだ。それが、島々がそれぞれの特色を持つアーキペラゴ (archipelago, 群島) に繋がる。

 

《 プロセス・プラニング論 》

 旧 大分県立中央図書館の設計意図を説明する論文で、ル・コルビュジエの無限成長美術館を思い出した。基本単位を決めて、増築を想定した設計だ。最初から全体像が決まっているわけでないので、オープンな計画となる。あらかじめ増築計画を決めておくのはクローズドな計画で、プロセス・プラニングとは違う。建築は変化し続けるというのが面白い。

 

 

写真:群馬県立近代美術館

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手法論の射程――形式の自動生成 (磯崎新建築論集 第3巻)

手法論の射程――形式の自動生成 (磯崎新建築論集 第3巻)