建築・アートの所感ノート

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読書感想:磯崎 新『磯崎 新 建築論集 全8巻』「第8巻 制作の現場――プロジェクトの位相」岩波書店, 2015

 ついに最終巻を読み終えてしまった。今まで「〜全集」というタイトルの本を全巻読んだことは無かった。それだけ磯崎の論考に刺激されてのめり込み、わたしにとって『磯崎 新 建築論集 全8巻』は特別な本であった。
 
 第8巻は代表的なプロジェクトが時系列でまとめられている。第7巻までと比較して、とても読みやすかった。第8巻まで読んできたので予備知識は十分であったことと、いくつかの実作(福岡相互銀行本店、群馬県立近代美術館つくばセンタービル)を既に見ていたことが読みやすさに繋がったと思う。どのプロジェクトも挑戦的なアイデアであり興味深い。
 
 雑誌の対談を読んでいると、磯崎を身近に感じられた。また今では国際的に評価されている伊東豊雄石山修武の若かりし頃の言葉に触れることができた。今、活躍している若手も同様に成長するのだろう。
 新都庁舎コンペで磯崎は広場を提案している。丹下が1950年代に市庁舎建築の設計を多くやっていたときに、磯崎は丹下の元で図面をひいていた。その時に広場を各地に計画していたらしい。ピロティもその一環のはず。それを継承してか、新都庁舎コンペでも提案された。しかし、丹下案(現都庁庁舎)は超高層のオフィスビルであり広場はない。丹下は1970年代に中近東の仕事をしていて、都庁の時期から日本に戻ってきたら、商業建築家になったようにみえたらしい。このような弟子による継承と、師匠の変化があったことは面白い。その後、1990年代以降は商業建築が建築界をリードするようになった。磯崎は都庁案について「あらためて書き記すことはない。」と言い切っているところがスゴい。そう言えるだけ膨大なエネルギーを注いで、やり切ったということだろう。カッコイイ。

 

 

〈目次の抜粋〉
Ⅰ 新宿ホワイトハウス
Ⅱ 孵化過程
Ⅲ お祭り広場
Ⅳ 福岡相互銀行本店
群馬県立近代美術館
つくばセンタービル
Ⅶ 東京都新都庁舎コンペ
Ⅷ ディズニー日時計
Ⅸ 海市
Ⅹ ウフィッツィ
博多湾オリンピック
Ⅻ 中国・中原

各プロジェクトが以下に区分されて構成している
①プロジェクト
②編者による背景説明
③対比的思考
④応答編

 

 

制作の現場――プロジェクトの位相 (磯崎新建築論集 第8巻)

制作の現場――プロジェクトの位相 (磯崎新建築論集 第8巻)