建築・アートの所感ノート

建築とアートの作品、展覧会、書籍などの感想を共有します。

読書感想:磯崎 新『挽歌集 建築があった時代へ』白水社, 2014年

 

 磯崎の交友関係の広さには驚いた。トップクラスの人たちは、みながどこかで繋がっている。今なら Facebook だろうか。建築家、写真家、芸術家など書籍や彼らの仕事を通して、特によく知っている人たちに対する文章が興味深かった。巻末には書き下ろしもあって嬉しい。



全体として気になった部分を引用する。

磯崎は丹下健三から次のように教えてもらったという。
  引用「建築することは、単に街や建物を設計することではない、人々が生きているその場のすべて、社会、都市、国家にいたるまでを構想し、それを眼に見えるよう組み立てることだ。」p. 143
 
 伊藤ていじ、二川幸夫のパートが面白かった。『日本の民家』を撮影するときに、高山の日下部邸と吉島邸は伊藤により発掘されたそうだ。
  引用「いかに有名な建築家の仕事であっても二川幸夫のめがねにかなわなければ写真を撮ってくれない。ということは歴史から落とされる。」p. 242

「幻=影(ファンタスマゴリー)が消えた」
  引用「一九世紀に組み立てられた『美術史』においてはルネサンス、すなわち今日の『美』なるものの始まりの地だ。聖地だ。古典の時代精神ツァイトガイスト)モデルだ。(中略)この聖地(フィレンツェ)もかつては捏造されたんだ、あらためてその上に捏造をかさねることしかない、と考えていた。いまや世界さえ捏造されている。」pp. 329-330


 歴史はつくっていくものと再認識させられた。

 

 

挽歌集: 建築があった時代へ

挽歌集: 建築があった時代へ