建築・アートの所感ノート

建築とアートの作品、展覧会、書籍などの感想を共有します。

映画「みんなのアムステルダム美術館へ」2014年

 とても面白かった!美術館の館長、学芸員、建築家、インテリアデザイナー、役所、サイクリング協会などの市民たちが議論しながら建築をつくっていく様子を映画にした作品だ。美術館を通り抜ける自転車道とエントランスが問題の焦点になる。

 アムステルダムは自転車天国で、美術館の通り抜け道路に1日1万人以上が通るらしい。建築家は美術館へ訪れる人と通過交通を考慮して改修案を提案して採用された。その提案が途中で却下される。サイクリング協会が通路が細すぎるなどと意見を言う。そんなごたごたの中で、建築家も途中で「どうにでもなれ」という投げやりな気持ちになっていた。皮肉的に「民主主義、バンザイ!」みたいに言うのが面白かった。おそらく本心であろう。美術館の館長も同じような感じだった。ライクス・ミュージアム(アムステルダム国立美術館)はオランダを代表する美術館なのだから、ルーブル美術館と同様に考えれば、自転車道のために美術館の設計を変えるなんてしなくてもよいはず。建築家はそのように言う。しかし、オランダ伝統の民主主義がチカラを発揮する。建築現場の現実が伝わってくる。

 日本美術を担当する学芸員が印象的だった。仁王像を解梱するシーンで、涙を浮かべながら初対面を喜んでいた。こういう担当者に日本美術が取り扱われるのは嬉しい。本当に美術が好きな気持ちが伝わってきた。

 

 美術館を通り抜ける道が、ある意味ではライクス・ミュージアムの特徴にもなっている。壮麗なエントランスがあるわけでなく、ひっそりとした通路の脇に開けられたドアを入ると吹抜の大きな空間が表れる。遠くから見てわかりやすい入口は、アプローチしていくときに、徐々に気持ちが上がっていく。例えるならば「来る、来る、来る、来る、キター!」という感じ。ライスクは一度、暗くて狭いトンネルを通り、そこから明るくと大きなエントランスホールが突然現れる。空間のコントラストが強いので、「おっ!明るい!広い!」と驚きと共に入館する感じだ。ルーブル美術館大英博物館メトロポリタン美術館みたいな威厳のある入口ではないが、それがオランダの民主主義を象徴しているようでもある気がする。

 

 ライクス・ミュージアムへ行く予定がある人であれば、映画を見て行ってからの方がより興味深く美術館を楽しめるだろう。

 

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Rijksmuseum – The Museum of the Netherlands - in Amsterdam

 

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