読書感想:『磯崎新の建築談議』シリーズ、全12巻(第8,10巻)、六耀社
この2冊を読んだ。
磯崎新、篠山紀信、五十嵐太郎『磯崎新の建築談議』六耀社, 図書館
第8巻 パラッツオ・デル・テ(16世紀) ジュリオ・ロマーノ
第10巻 ショーの製塩工場(18世紀) クロード・ニコラ・ルドゥー
磯崎新建築論集 第5巻 で次の3論文が掲載されていたが、写真が全く無かった。
「両性具有の夢――ヴィッラ・アドリアーナ」
「排除の手法――ル・トロネ修道院」
「闇に浮かぶ黄金――サン・ヴィターレ聖堂」
『磯崎新の建築談議』をまず読んでから、その本を傍らに置いて論文を読めばもっと理解が進んだと思う。読む順番を間違った。タイトルに「談義」とあるように磯崎さんと五十嵐さんの対話が収録されており読みやすかった。雑誌みたいな感じだ。論文は『建築行脚』の方に掲載されているのだろう。『建築行脚』シリーズも読みたいが、とりあえずは『建築談義』シリーズを全巻読みたい。
磯崎さんはバロック様式が好きなわけだが、その理由が少しずつわかってきた。技巧的で面白いのだ。日本建築でいうと、書院造りよりも茶室みたいな感じ。正統ではなく系統。建築を本当の意味でよく理解しているからこそ、マニアックなデザインが好きなのではないか。茶目っ気のあるデザイン、本家を理解している人だけがわかる、くずしのあるデザイン。イタズラ好きな性格というか、へそ曲がりというか、そういう性分がよめる。
引用やオマージュは美術の世界では繰り返されてきた正統派の手法だ。それを建築で過剰(excess)にやったのが磯崎の「つくばセンタービル」だ。
わたしはパッラーディオなど正統の方が好きであるが、傍流の良さも理解できるようになったと思う。『建築談義』シリーズで紹介されている建築へ、そのうち行きたい。最近、建築の写真集を見る機会が減っていたので、久しぶりにデザインそのものを楽しめた。
写真(上):つくばセンタービル