建築・アートの所感ノート

建築とアートの作品、展覧会、書籍などの感想を共有します。

読書感想:丹下健三

丹下健三に関する本を集中的に読んだ。カッコ内は読了日。
 
丹下 健三・藤森照信丹下健三』新建築社, 2002(2014/04/16)
丹下 健三『人間と建築 デザインおぼえがき』彰国社, 1971(2014/03/23)
丹下 健三『建築と都市 デザインおぼえがき』彰国社, 1970(2014/05/02)
丹下 健三『丹下健三 一本の鉛筆から』日本図書センター, 1997(日経新聞私の履歴書」全30回を編集)(2014/01/06)
豊川 斎赫『群像としての丹下研究室』オーム社, 2012,(2014/03/13)
槇 文彦+神谷 宏治 編 『丹下健三を語る──初期から1970年代までの軌跡』鹿島出版会, 2013(2014/01/03)
北川 フラム監修『丹下健三 伝統と創造 瀬戸内から世界へ』美術出版社, 2013(2014/05/12)
丹下 憲孝『七十二時間、集中しなさい。父・丹下健三から教わったこと』講談社, 2011(2014/04/29)
 
 
 今までは漠然とした知識しかなかったが、ようやく丹下健三の偉大さが理解できた。
 
 初期作品は「広島ピースセンター」をはじめ、ル・コルビュジエを参照してデザインされている。ピロティやブリーズソレイユ、彫刻的な造型などだ。当時から注目されていた丹下が、尊敬する建築家から学んで設計をしている。ルイス・カーンもフランク・ロイド・ライトの寸法を使って設計していた。「先人から学ぶ」ことの重要性を再認識した。
 
 1960年代は東京カテドラル、「国立屋内総合競技場(代々木体育館)」など象徴的な建築をつくる。そして、1970年の「大阪万国博覧会」、お祭り広場の大屋根。いずれも大空間であるため、屋根が重要なポイントになる。「戦没学徒記念館」も屋根が特徴的で、ヴォールトが壁にピン接合していて、壁とアーチの間から光がさす。大東亜コンペ案でも伊勢神宮を引用した屋根のボリュームが印象的だった。たしか、近代に日本に来た外国人建築家(ブルーノ・タウト?)が、「日本建築は屋根の建築だ」という意味の発言をしている。丹下が日本建築史の流れを表現しているとも言えるだろう。
 
 
丹下健三』にて、藤森が丹下建築の特徴3つをあげた。非常によく納得できた。
     1.軸をとおす(配置計画、都市計画)
     2.軸の先にモニュメンタルな建築は配置しないで空にする
     3.マッス・尖塔・水平
 
丹下健三 伝統と創造 瀬戸内から世界へ』で、神谷が丹下を次のように述べる。
     1.丹下は学(まね)びの達人である
     2.丹下は時代の流れを読む名人である
     3.丹下は粘り強い人物である
     4.丹下は「わがまま」者である
 
 
 丹下は勉強家で粘り強い。そして、考え続ける。丹下本人よりも、周囲にいた人たちによる丹下の設計過程や人物像の言葉が多い。それらが偉大な建築家の伝説、エピソードとなる。今、まとめられた書籍を読むことができて嬉しい。これから丹下建築をみるときは、書籍からつくられた丹下像が頭に浮かぶだろう。
 
 
 「戦没学徒記念館」 (淡路島, 南あわじ市 2015年 開館予定)と「山梨文化会館」を近いうちに見学したい。