建築・アートの所感ノート

建築とアートの作品、展覧会、書籍などの感想を共有します。

Chim↑Pom(チムポム)「BLACK OF DEATH 2013」

東京国立近代美術館(MOMAT)で、コレクション展示「特集: 地震のあとで―東北を思うⅢ」(2014.4.15-6.1)を見てきた。

http://www.momat.go.jp/Honkan/thinking_about_tohoku_iii/index.html

 

0. まずはこれを見て欲しい。

 


BLACK OF DEATH/Chim↑Pom - YouTube

 

1.
 MOMAT 60周年記念特別展, 2012 のタイトルにあったように「美術にぶるっ!」っとした。今まで感じたことがないくらい感激した。2007年制作の映像作品「BLACK OF DEATH」は、ワタリウムで見たことがあった。それから5年後の本作は完成度が上がっていた。ノイズが消え、クールな仕上がりになっている。momat の所蔵作品になっていて、やはり、それだけの価値があると思う。

 


2.
 カラスの仲間を呼び集める声を録音し、スピーカーで大音量で流す。スピーカーを鳴らしながら、クルマやバイクで街を移動する。カラスが100羽以上集まり、空を飛ぶ様子は不吉な予感をさせる。非常に印象の強い映像だ。展示作品では福島第一原発事故フクシマ)の立入制限区域から始まり、大阪万博の会場を経由して渋谷に移動する。渋谷は代々木体育館の横から旧 電力館東電)の脇を通り109へ。

 wikipedia には、こう説明してある。「日本最古の軽水炉と知られる敦賀1号炉は大阪万博の開会式の日に営業運転を開始し、万博会場へ初送電したことでも知られる。」作品のキャプションにも書いてあった。3.11によって原発の夢は、ある種の終焉をむかえた。その原点である夢にあふれていた大阪万博の会場には太陽の塔だけが残っている。太陽の塔は、正面の印象が強いと思うが、本作では後ろ姿が映し出される。背中には黒い太陽が描かれている。岡本太郎の対極主義の現れだ。日本の伝統の陰と陽みたいなことで、全ては二面性があることを暗示している。つまり、原発が本来持っている負の要素を表出したことを示す。また、カラスは神話上の八咫烏(ヤタガラス)を想起させる。八咫烏は太陽の化身である。ここで太陽と八咫烏のイメージが重なる。

 最後に改装して2011.3.20 にオープン予定であった東電の旧 電力館の横を通る(2011.5.31閉館)。そこでフクシマと再度、関連を持たせて、109前で映像は終わる。フクシマでつくられた電気が東京に送られて消費される。109というシンボリックな商業ビルが、現代の消費社会を暗示する。前作の「BLACK OF DEATH」でも109前を舞台にしていたから、原点回帰的な意味もあるだろう。Chim↑Pomがパワーアップして帰って来た。

 


3.
 表現が非常にシンプルで、だからこそ力強い。集まってくるカラスは仲間を助けようとしている行動だった気がする。仲間を助けるために集まるのは良い意味であるが、カラスは不吉なことのシンボルでもある。「カラスが夜鳴くと災いが起きる兆し」や「夜、カラスが鳴きわたると、死人のでる知らせ」という悪い意味もあるらしい。この作品では悪い意味が強い。
 Chim↑Pomは、渋谷駅の岡本太郎「太陽の神話」に対してフクシマの爆発した原発の絵を追加して描きオマージュを捧げている。そういう意味でも、フクシマ岡本太郎・渋谷とChim↑Pomは関連する。
 このように様々な意味が重なり合いを、作品から伝わってきたから感動したのだろう。やられた!という感じ。

 

また、丹下健三による大阪万博、代々木体育館(旧 国立屋内競技場)も関連し、地霊のようにも感じられる。 

 

ぜひ、東京国立近代美術館に足を運んでみてもらいたい。

 

http://chimpom.jp/bod.html