建築・アートの所感ノート

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読書感想:磯崎新『磯崎新建築論集 全8巻』「第2巻 記号の海に浮かぶ<しま> 見えない都市 」

この第2巻は磯崎の都市に関する論文がまとめられている。

次の表が、特に興味深かった。

 

時代 主題 パラダイム 手法
19世紀 首都 (capital) 計画 (planning) 目標=テロス
20世紀 大都市 (metropolis) 代理表象 (representation) 大量数 (greater number)
21世紀 〈島〉都市(archipelago) 虚体 (virtual body) 図象=イコン

 「Ⅳ 不可侵の超都市 2〈しま〉の析出」, p. 203


 19, 20世紀は見るだけで、何となくイメージできる。「代理表象」は、ル・コルビュジエならチャンディーガル(インド)で人体を、オスカー・ニーマイヤーはブラジリアで鳥を参照しているようなことを意味する。

 アーキペラゴ(群島)は、東京なら〈新宿・渋谷・丸の内〉とマチ毎に特色がある様子をいう。もっと大きなスケールなら、〈東京・NYC・パリ〉などになる。都市のカタチはなく(虚体)、記号(図象)が都市を表す。そして、同質性よりも異質性が重要視される。
 R.ヴェンチューリの『ラスベガス』では、クルマから見える看板(図象)だけが建物の目的を示し、建築のカタチは意味をなさないと述べられている。サインやアイコンが最重要な人間がビルディングタイプを判別する手がかりとなる。同じように都市では土地に対して無根拠にある場所を、居住区・ビジネス地区(図象)と決められる。

 これらのアーキペラゴは、田中敦子の作品のようにネットワークを張り巡らせる。ポロックのオールオーバーのような世界観だ。ヒエラルキーはなく、並列化されている。
 新たな都市の計画は、コンピュータを使ったシミュレーションによって計画されある。今、話題になっているビッグデータ(各個人のGPS移動データなど)を使い、解析された最適解が計画となるのだろう。

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作品例:田中敦子

 


「建築は小さい都市であり、都市は大きい建築である」(アルベルティ『建築十書』)
 都市が図象であれば、建築も図象となる。それが Iconic Achitecture だ。シンガポールが現代を象徴する都市であろう。

 

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