谷口吉生「鈴木大拙館」2011年, 金沢市
まもなく開通する新幹線に活気づく金沢駅。バスに乗り換え、バス停から目的地まで歩いていると、建築学生を1人発見した。さらに、クルマで来た取材するオジさん2人組も同時に鈴木大拙館に向けて歩いた。みんな建築関係者で、まるで聖地巡礼をしているようだった。
まずは外観から鑑賞。「思索空間」と名付けられた立方体の空間が、「水鏡の庭」という水盤の上に浮かぶ。これが鈴木大拙館のメイン・イメージになる。黒い水面に白い立方体の対比がよい。
▲外観
▲平面図, official websiteから引用
平面図をみていると、どことなくミース・ファン・デル・ローエが描きそうなプランに見えてくる。
禅の「まる・さんかく・しかく」の概念が設計に反映している。鈴木大拙はこれらを「宇宙の生成発展」「世界の構成要素」を示すと考えたらしい。様々なとらえ方があるようで難しい。水鏡の庭に、定期的につくりだされる噴水は「まる」を描く。「さんかく」はシンボルツリーのクスノキの立面、「しかく」は最初に述べた、思索空間がそれである。他にも多数、このカタチが使用される。内部回廊につくられたクスノキを見るための場所の平面が「さんかく」である。クスノキも上方から見ると、平面が「まる」だ。坪庭に置かれた手水鉢は、一つに全ての要素が入っている。
▲仙厓, 江戸時代, 出光美術館蔵
▲水面に「まる」、クスノキが「さんかく」、右手の思索空間は「しかく」を示す
▲手水鉢、底辺が球(まる)、上から見ると「しかく」、凹みは「さんかく」
▲エントランス, 中庭まで見通せる
照明が落とされた内部回廊を通り、現実世界から非日常の世界にいざなう。途中、大きなクスノキがみえる。廊下の突き当たりには鈴木先生のポートレート写真が展示してあった。そこから展示室が始まる。展示数は多くなく、パッとみられる程度。キャプションが無く、鑑賞者が考えることを期待する展示方法になっている。
展示室の隣に学習空間があって、ここに現代の床の間といえる空間の華となるべき場所があった。大きな漆塗りの板に花が飾ってあった。
▲展示空間へ向かう内部回廊
学習空間をでると、外部回廊に出て水鏡の庭の横を通る。展示空間は「ケ」の世界で、壁を隔てて「ハレ」の世界に出るような気がした。白・黒と壁一枚を隔てて、光の状況が反転する。外部回廊から思索空間に続く導線が、能舞台みたいな構成だ。茶室に向かうまでの露地にも思える。柱のない広縁のようでもある。とにかく、日本的な空間だ。
▲外部回廊
▲思索空間
▲思索空間, 上方を見上げる, パンテオンと同じまるいトップライト
《建築ガイド》
これから新幹線が開通し、金沢を訪れる人が増える。
観光案内所でこれらを手に取り、建築鑑賞をするのはいかがだろうか?
カナザワケンチクサンポ vol.1
http://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2013/kenchikusanpo1.pdf
カナザワケンチクサンポ vol.2
http://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2014/20140329_kenchikusanpo.pdf
(作成:金沢工業大学 建築系の学生)
金沢紹介/金沢アーキテクチャー・ツーリズム vol.1
http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/digitalpamphlet/book/book40_n/
金沢紹介/金沢アーキテクチャー・ツーリズム vol.2
http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/digitalpamphlet/book/book49/