建築・アートの所感ノート

建築とアートの作品、展覧会、書籍などの感想を共有します。

読書感想:磯崎新『磯崎 新 建築論集 全8巻』「第4巻〈建築〉という基体――デミウルゴモルフィスム」, 岩波書店

 アクロポリス、イセ、ジョン・ソーンの章が特に興味深かった。アクロポリスパエストゥムに行きたくなる。パルテノン神殿を見たい、体験したい。ブルネレスキ、アルベルティ、パラーディオなどルネサンスの建築家が何度も登場してくるので、もう一度、建築史を勉強したくなった。

 ロンドンへ行ったときに、Dulwich Picture Gallery に行かなかったことを後悔した。Sir John Soane’s Museum の記述を読んでも、印象深かった地下の空間以外を思い出せない。キャンドルナイトという特別なイベントに見に行ったこともあり、磯崎が述べる様々な光の演出がされていることは体験できなかった。

 丹下に関する本を読んでいたときに、「神のスケール」というキーワードが出てきたことを思い出した。デミウルゴモルフィスムは神や人間を含む、全てのスケールを扱う。

 

写真:Sir John Soane's Museum

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< 以下、目次および気になった部分のメモ >

第Ⅰ部 メタファーとしての建築

第Ⅱ部 アルケー――始源と反復
 第1章 私にとってのアクロポリス
原(アルキ)=構造(ストラクチャー)
アクロポリスは概念としての《建築》そのもの
アクロポリスが私を反逆者に仕立てた」ル・コルビュジエ
「地中海の民家のような土着建築からヒントを得ているというのが通説」
ル・コルビュジエが壁を白くしたのは、地中海のヴァナキュラーな建築の影響を受けているためらしい
堀口捨己は西洋的な建築をつくることを諦めた(茶室研究へ)

 第2章 イセ ―― 始源のもどき
「何事の おわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」西行
隠すことの祖型 捏造された始源

第Ⅲ部 クライシス――斜行と逸脱
ジョン・ソーン ―― 建築と逸脱
ロージェ神父『建築試論』p. 158
「必要のないいっさいの装飾的な付加的要素を否認し、建物の構成にかかわる必要部材しか認めない。」

第Ⅳ部 デミウルゴスの行方
14世紀 以前 テオモルフィスム 神像形象主義
15世紀 ルネサンス 以後 アンントロポモルフィスム 人体形象主義
21世紀 以後 デミウルゴモルフィスム 造物主義(磯崎の造語)
デミウルゴスは強力な能力を持ってはいるが、間違った設計図でさえ、もし神がこれを与えたなら、そのまんまに彫り、造ってしまう。(中略)デミウルゴスに賦与された超人間的な能力こそが、建築家のモデルたるべき」pp. 215-216
デミウルゴモルフィスムはアイコニック・ビルティングやアルゴリズミック・アーキテクチュアに繋がる
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